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なぜ捻挫した足首は繰り返し捻挫しやすくなるのか

👤 捻挫を繰り返す人、足首の不安定感が抜けない人、スポーツ復帰を控えている人
EM(柔道整復師・接骨院院長)⏱ 約17分で読める
なぜ捻挫した足首は繰り返し捻挫しやすくなるのか

「昔捻挫してから、同じ足首を何度もやっている」——接骨院で本当によく聞く話です。足首の捻挫は、一度やると繰り返しやすいケガの代表格です。

なぜ同じ場所ばかり捻挫してしまうのか。「クセになっている」で片付けられがちですが、実際には複数の要因が重なって起きていることが分かっています。この記事では、その中身を整理します。

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**先に結論です。**繰り返す捻挫には、主に3つの要因が関わっています。

  1. 靭帯・関節包が伸びて緩み、物理的に不安定になっている
  2. 傾きそうになったときに立て直す「反応」が遅れる(固有受容感覚・神経系の問題)
  3. とっさに体を支える筋力が足りていない

そして、この3つのうち2つ目・3つ目は、トレーニングで改善できるという点が重要です。

① 靭帯が伸びて、関節そのものが緩くなる

一度強く捻挫すると、足首の外側の靭帯(前距腓靭帯など)が伸びたり、部分的に損傷したりします。

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Bonnel F, et al.「Chronic ankle instability: biomechanics and pathomechanics of ligaments injury and associated lesions」Orthopaedics & Traumatology: Surgery & Research, 2010

足首の安定性は、骨の形状と複数の靭帯の組み合わせによって保たれています。捻挫でこの靭帯が伸びたり損傷したりすると、関節そのものの物理的な安定性が低下し、これが慢性的な足首の不安定感(chronic ankle instability)につながることが報告されています。

靭帯は一度伸びると、筋トレのようには簡単に元の長さに戻りません。土台となる関節そのものが、以前より緩い状態からスタートすることになります。

② 「傾きそうになったときに立て直す反応」が遅れる

私が現場で感じるのは、**「捻挫しそうになった瞬間に、立て直そうとする反応そのものが鈍っている」**人が多いということです。これは感覚(センサー)の問題で、専門的には固有受容感覚・神経系の反応速度に関わる話です。

Hertel J.「Sensorimotor deficits with ankle sprains and chronic ankle instability」Clinics in Sports Medicine, 2008(総説)

足首を捻挫した人や、慢性的な足首の不安定感を持つ人には、関節の位置や動きを感じ取る感覚、反射的な反応、筋肉の制御にまたがる、複数のレベルでの感覚運動機能の低下が確認されています。この低下が、足首だけで起きているのか、脊髄・脳レベルでも起きているのかは、まだ完全には解明されていません。

この「反応の遅れ」は、繰り返し練習すること(神経系のトレーニング)で改善できることが分かっています。

Schiftan GS, Ross LA, Hahne AJ.「The effectiveness of proprioceptive training in preventing ankle sprains in sporting populations」Journal of Science and Medicine in Sport, 2015(7試験・3,726人のメタ解析)

バランス訓練を中心とした固有受容感覚トレーニングを行ったグループは、行わなかったグループに比べて捻挫の発生率が35%低下(相対リスク0.65)。過去に捻挫歴がある人に限っても、再受傷リスクが36%低下(相対リスク0.64)という結果でした。

「反応が遅い」のは体質ではなく、鍛えられていないだけであるケースが多い、ということです。

③ とっさに体を支える筋力が足りていない

もう一つ見落とされがちなのが、筋力そのものの問題です。

仮に「傾きそう」というセンサーが正しく働いて、回避しようとする指令が神経から出せたとしても、**それを実行するだけの筋力が足りていなければ、体重がかかった瞬間に支えきれません。**捻挫を繰り返す方の中には、感覚の問題以前に、そもそも足首・下腿まわりの筋量が少ない方も少なくない印象があります。

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Jeon HG, et al.「Ankle Instability Patients Exhibit Altered Muscle Activation of Lower Extremity and Ground Reaction Force during Landing」Journal of Sports Science and Medicine, 2021(システマティックレビュー・メタ解析)

足首の不安定感を持つ人は、着地の際の下肢の筋活動パターンや、地面からの衝撃の受け方そのものが、健常な人と異なることが報告されています。感覚の問題だけでなく、実際の運動出力にも変化が起きているということです。

「気づいてはいるが、支えきれない」——これも、繰り返す捻挫の一因です。

②と③をつなぐもの:脳と筋肉の「連動性」

②の反応の速さと③の筋力は、別々に鍛えても十分ではありません。自動運転の車やロボットと同じで、「センサーが感知する」ことと「体がそれに合わせて正しく動く」ことは別の話です。いくらセンサー(感覚)が優れていても、それに応じてどう体を動かすかという脳と筋肉の連動ができていなければ、とっさの場面で体は正しく反応してくれません。

だからこそ、ただ足首まわりの筋肉を鍛える単純な筋トレだけでは不十分で、実際に体重を乗せながら、不安定な状況で動くトレーニングが必要になります。片脚でバランスを取りながら着地する、不安定な足場の上で体重移動する——こうした練習を繰り返すことで、「こういう傾き方をしたときは、こう動いて立て直す」という動きのパターンを、体(脳)に覚え込ませていくイメージです。

実際、先ほど紹介した研究で効果が確認されているのも、単純な筋トレ単体ではなく、バランス訓練や、荷重をかけながら動く形の運動(固有受容感覚トレーニング・機能的なリハビリ運動)です。筋力と反応速度を別々に鍛えるのではなく、「動きの中で同時に鍛える」ことが、再受傷を減らす鍵になっているようです。

リハビリ・筋力トレーニングで、実際に再受傷は減る

ここまでの①〜③を踏まえると、**「靭帯の緩みは仕方ないが、②と③は鍛えられる」**という話になります。実際、運動によるリハビリそのものが再受傷を減らすという報告もあります。

Bleakley CM, et al.「Rehabilitation Exercises Reduce Reinjury Post Ankle Sprain」Archives of Physical Medicine and Rehabilitation, 2019(システマティックレビュー・メタ解析)

急性の足首捻挫のあと、運動を中心としたリハビリを行ったグループは、行わなかったグループに比べて再受傷が有意に少なかったと報告されています。ただし、どんな内容・頻度・量のトレーニングが最も効果的かについては、まだ確立されていません。

「捻挫は安静にしていれば治る」で終わらせず、痛みが落ち着いた後のリハビリ・トレーニングまで含めて「治療」、というのが正直なところです。

テーピング・サポーターはどう考えるべきか

まだ筋肉が十分に戻っていない復帰直後などは、テーピングやサポーターで補うのは理にかなっています。筋力が十分にある場合でも、ケガの予防目的で補強すること自体は問題ありません。「サポーターに頼ると筋肉が弱る」という心配を聞くことがありますが、筋肉に継続して負荷がかかり続けている限り、それだけで筋肉が落ちることはないというのが私の臨床上の実感です(これは研究で直接検証されているわけではなく、あくまで現場で見てきた実感としてお伝えします)。

ただし、研究データを見ると、テーピング・サポーターの効果は「万能」ではありません。

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Xue X, et al.「Do External Supports Influence Proprioception in Patients With Chronic Ankle Instability?」American Journal of Physical Medicine & Rehabilitation, 2022(8研究のシステマティックレビュー・メタ解析)

テーピングやサポーターの装着は、関節がどの角度にあるかを感じ取る感覚(位置覚)は改善する一方で、動きそのものを感じ取る感覚(運動覚)はむしろ低下するという、方向の異なる結果が報告されています。「サポーターをつければ感覚が元通りになる」とまでは言えない、というのが実際のところです。

つまり、**テーピング・サポーターは「支える」役には立ちますが、②で説明した神経系の反応そのものを鍛える代わりにはなりません。**補助として使いながら、並行してトレーニングを行うのが現実的です。

よくある質問(FAQ)

Q. 一度捻挫したら、もう完全には治らないということですか? A. 靭帯の緩みそのものを完全に元に戻すのは難しいですが、②反応の速さと③支える筋力は、トレーニングで改善できます。「治らない」というより、「鍛える部分が残っている」と捉えるほうが実用的です。

Q. 捻挫のあと、どのくらいで運動に復帰していいですか? A. 私は柔道整復師で、個別の復帰時期を判断する立場ではありません。痛み・腫れの状態は個人差が大きいため、担当の医療機関・専門家の判断に従ってください。

Q. バランストレーニングは具体的に何をすればいいですか? A. 片脚立ちや、不安定な床の上でのバランス保持などが一般的です。ただし足首の状態によって適切な負荷は変わるため、痛みが残っている場合は自己判断せず専門家に相談してください。

Q. サポーターをつけっぱなしにするのはよくないですか? A. 少なくとも「装着し続けると筋肉が弱る」という強い根拠は見当たりませんでした。ただし、サポーターが神経系の反応を鍛えてくれるわけではないため、トレーニングと並行して使うのがおすすめです。

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まとめ

まとめポイント

  • 捻挫を繰り返す背景には、①靭帯の緩み、②反応の遅れ(固有受容感覚)、③支える筋力不足という3つの要因がある
  • ①は完全には元に戻りにくいが、②と③はトレーニングで改善できる
  • バランス訓練(固有受容感覚トレーニング)で、再受傷リスクは36%低下したという報告がある
  • 運動を含むリハビリを行うと、行わない場合より再受傷が少ない
  • テーピング・サポーターは支えとして有効だが、関節位置覚は改善しても運動覚はむしろ低下するという報告もあり、トレーニングの代わりにはならない

※本記事の情報は一般的な健康情報の提供を目的としており、医療アドバイスではありません。足首の痛みや不安定感が続く場合は、自己判断せず医療機関にご相談ください。


【参考・出典】

  1. Bonnel F, Toullec E, Mabit C, Tourné Y.「Chronic ankle instability: biomechanics and pathomechanics of ligaments injury and associated lesions」Orthopaedics & Traumatology: Surgery & Research, 96(4):424-432, 2010.(総説) DOI: 10.1016/j.otsr.2010.04.003
  2. Hertel J.「Sensorimotor deficits with ankle sprains and chronic ankle instability」Clinics in Sports Medicine, 27(3):353-370, 2008.(総説) DOI: 10.1016/j.csm.2008.03.006
  3. Schiftan GS, Ross LA, Hahne AJ.「The effectiveness of proprioceptive training in preventing ankle sprains in sporting populations: a systematic review and meta-analysis」Journal of Science and Medicine in Sport, 18(3):238-244, 2015.(7試験・3,726人) DOI: 10.1016/j.jsams.2014.04.005
  4. Jeon HG, Lee SY, Park SE, Ha S.「Ankle Instability Patients Exhibit Altered Muscle Activation of Lower Extremity and Ground Reaction Force during Landing: A Systematic Review and Meta-Analysis」Journal of Sports Science and Medicine, 20(2):373-390, 2021. DOI: 10.52082/jssm.2021.373
  5. Bleakley CM, Taylor JB, Dischiavi SL, Doherty C, Delahunt E.「Rehabilitation Exercises Reduce Reinjury Post Ankle Sprain, But the Content and Parameters of an Optimal Exercise Program Have Yet to Be Established: A Systematic Review and Meta-analysis」Archives of Physical Medicine and Rehabilitation, 100(7):1367-1375, 2019. DOI: 10.1016/j.apmr.2018.10.005
  6. Xue X, Chen Z, Xu X, Tao W, Hua Y.「Do External Supports Influence Proprioception in Patients With Chronic Ankle Instability?: A Systematic Review and Meta-analyses」American Journal of Physical Medicine & Rehabilitation, 101(7):644-651, 2022.(8研究のシステマティックレビュー) DOI: 10.1097/PHM.0000000000001876

カラダリセットラボ|本記事は接骨院院長(柔道整復師・施術歴19年目・のべ7万人以上を施術)が執筆・監修しています。

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