肩こり・腰痛を繰り返す人へ|接骨院院長が見ている「負荷と耐える力」
「揉んでもらった日は軽い。でも、しばらくすると同じところが張ってくる」——心当たりはありませんか。
先に言っておくと、**揉めば軽くなります。**そうでなければ接骨院も整体も存在していません。
ただ、それだけで終わりにすると、**同じことを繰り返しやすくなります。**凝りや痛みを作った側の条件が変わっていないからです。
この記事では、私が施術現場で肩こり・腰痛をどう見ているかを整理します。結論を先に言うと、「かかる負荷」と「耐える力」のバランスという一点に集約されます。
本記事は、施術歴19年目・のべ7万人以上の体と向き合ってきた柔道整復師・接骨院院長が執筆しています。
揉んで軽くなるのは、本当です
まず、施術の効果を否定するつもりはありません。
固まった筋肉をゆるめれば血流は戻りますし、その場で軽くなります。痛みが強くて動けない状態なら、まずそこをどうにかするのは正しい順番です。
ただ、施術でできることはいま固まっているものをゆるめることが中心です。それを作った側の条件は、生活のなかにあります。だから施術と生活の見直しは、片方だけでは足りません。
同じ話をむくみ解消 完全ガイドでも書きました。ほぐす・流すのは有効で、そのうえで原因のほうも見る。肩こり・腰痛も同じ構造です。
では、なぜ凝りができたのか
ここを飛ばして施術だけ受けても、通い続けることになります。私が確認するのは主に3つです。
① 姿勢
日常でどんな形をしているか。デスクワークで前傾になっている、スマホを見るときに首が落ちている、片側にばかり荷重している。
姿勢そのものの直し方はスマホ首・眼精疲労を防ぐ使い方に書きましたが、意識で正そうとしても続きません。環境のほうを変えるのが現実的です。
② 長時間、同じ姿勢でいること
姿勢が良くても、動かない時間が長ければ凝ります。筋肉は縮んだり伸びたりして血流を動かしているので、固定されているとその働きが止まります。
「良い姿勢で8時間座る」より「多少崩れても1時間に1回立つ」ほうが、体には優しいです。
③ オーバーユース(使いすぎ)
スポーツや仕事で、特定の部位を繰り返し使っている場合です。こちらは①②と逆で、動かしすぎが原因になります。
同じ「凝り」でも、動かなすぎと動かしすぎでは対処が逆になります。ここを取り違えると、良かれと思ってやったことが悪化につながります。
そもそも論:耐えられるだけの筋肉があるか
ここからが、私がいちばん大事だと思っている前提です。
体の動きに対してかかる負荷に、筋肉量が足りていない。
同じ仕事、同じ姿勢でも、平気な人とすぐ痛くなる人がいます。その差は根性でも体質でもなく、耐えられるだけの力があるかどうかであることが多い。
つまり肩こり・腰痛は、
かかる負荷 > 耐える力
この状態が続いたときに出てくる、と考えると整理しやすくなります。
だから対策は2方向しかありません。**負荷を減らすか、耐える力を増やすか。**姿勢や環境の話は前者、これから書くのは後者です。
これは肩と腰だけの話ではありません
ここまで肩こり・腰痛を例に書いてきましたが、この考え方はどの部位にも当てはまります。
膝が痛い、肩が上がらない、股関節が詰まる、足首が痛む——部位は違っても、起きていることは同じです。
その関節にかかる負荷に対して、支える筋肉が足りていない。
膝なら太ももやお尻、肩なら肩甲骨まわり、腰なら体幹。関節そのものが痛んでいるように見えても、支える側が追いついていないことが背景にあるケースは少なくありません。
若い人にも、鍛えている人にも起こります
「筋肉が減るから」と聞くと高齢者の話に思えますが、そうではありません。
**若い方にも、スポーツをしている方にも同じことが起こります。**むしろ体に自信のある方ほど、この見方を持っていないことが多い。
理由は単純で、筋肉の量だけを見ても答えが出ないからです。大事なのは、かかる負荷との釣り合いです。
一般の方より筋肉があっても、かけている負荷はそれ以上に大きい——スポーツをしている方が痛めるのは、たいていこのパターンです。
「負債」で考えると分かりやすい
私は、こう説明することがあります。
あるスポーツをして、体にかかる負荷を100だとします。その動きを支えるのに90ぶんの筋肉しかない人は、毎回10の負債を抱えることになります。
1回では何も起きません。10なら翌日には返せてしまう。
でも、それが毎日続いたら。あるいは、練習量が増えて負荷が120になったら。返しきれないぶんが、少しずつ積み上がっていきます。
そしてある日、痛みとして表に出てくる。
だから多くの方が「今日、変なことはしていないのに」と言われます。
その通りなんです。**痛みが出た日の動作が原因とは限りません。**そこまでに積み上がった負債が、たまたまその日に限界を超えただけ、ということがよくあります。
原因を「昨日の動作」に探しても見つからないのは、そのためです。
「スポーツをしているから足りている」は、たいてい過信です
ここは強めに書きます。
運動している方ほど「自分は筋力がある」と思っていますが、実際に体を触ると、筋力も柔軟性も足りていない方がほとんどです。
競技に必要な動きは繰り返しているので、使う場所は発達しています。でも、その動きを支える側や、使っていない方向の筋肉は育っていない。柔軟性にいたっては、鍛えている人ほど硬いこともあります。
負荷だけが先に大きくなっていて、支える力が追いついていない——これがスポーツをしている方の典型的な形です。
とくに心配なのは、成長期の子どもです
小学生・中学生・高校生。ここがいちばん危ないと思っています。
理由は2つあります。
① 体がまだできていないのに、負荷だけ大人並み
成長期の体は、骨も筋肉もまだ作っている最中です。支える力が完成していない状態で、大人と変わらない量の練習をしている。負債が溜まる速度が速いのは当然です。
② 練習量が多すぎる
クラブチームに所属している子だと、**週に5回、6回と練習があります。**私はこれを、正直なところ異常だと感じています。
体は練習中に強くなるのではありません。練習で壊れたものを、休んでいるあいだに作り直すことで強くなります。毎日練習していたら、その作り直す時間がありません。
③ そこに栄養不足が重なる
さらに深刻なのがここです。
これだけ動いていれば、必要な食事の量も相当なものになります。ところが、それに見合うだけ食べられている子は多くありません。足りなければ、体は自分の筋肉を分解して使います。
つまり、毎日練習しているのに筋肉がつかない。それどころか減っていく。
実際、スポーツをしているのに異常に細い子が増えていると感じます。しかも、そういう子ほど故障します。当たり前で、支える力が減っているところに、毎日負荷をかけているからです。
この状態は、スポーツ医学の分野で **RED-S(スポーツにおける相対的エネルギー不足)**として研究されています。 運動量に対して食べる量が足りない状態が続くと、骨や筋肉、ホルモン、 成長そのものに影響が及ぶことが指摘されています (Gould RJ, et al. International Journal of Sports Medicine, 2023)。
また、成長期のオーバーユース障害を扱ったレビュー (Arnold A, et al. Sports Health, 2017)は、リスク要因として 急激に成長している時期であること・練習量・過去のケガを挙げています。
「たくさん練習させる」ことが、そのまま強くすることにはなりません。
では、どう組めばいいか
「練習を減らせ」と言っても、現実には難しいことが多いと思います。なので、中身を変えるという考え方を提案しています。
筋肉を強く使う練習は、1日あけてやる。
体を作り直すには時間が要ります。追い込む日を毎日にせず、間隔をあける。そのあいだの日を休みにできないなら、内容を変えればいいんです。
あいだの日にやること
- ストレッチ——使った場所を伸ばして、動く範囲を戻す
- 巧緻(こうち)トレーニング——動きの精度を上げる練習。バランス、フォームの確認、細かい動作の反復
巧緻トレーニングは、筋肉への負担が軽いわりに、競技力には直接つながります。フォームが整えば、同じ動きでも体にかかる負荷が減る。つまり負債の増え方そのものが小さくなるわけです。
「強く使う日/整える日」を交互に置く。これだけで、練習の総量は変えずに、体の負担だけを下げられます。
毎日全力で追い込むより、このほうが結果的に伸びます。
作り直す時間があるぶん、**質のいい筋肉がつきます。**その筋肉で次のトレーニングをするから、**同じ練習でも一段上のことができる。**そしてまた作り直す時間をとる——この繰り返しで、上がっていきます。
追い込む → 作り直す → 上がった状態で追い込む。 この循環に乗せられるかどうかが、伸びる子と故障する子の分かれ目だと思っています。
毎日追い込むと、この輪が回りません。作り直す前に次が来るので、 減った状態のまま次の負荷を受けることになります。
「休ませる=サボらせる」ではありません。次のレベルに乗るための時間です。
「筋トレをすると背が伸びなくなる」は間違いです
いまだに指導者の口から出ることがありますが、これは間違いです。
米国小児科学会は2020年に、子どもと思春期の筋力トレーニングについての報告書を出しています(Stricker PR, et al. Pediatrics, 2020)。適切な指導のもとで行う筋力トレーニングは、スポーツのトレーニング、学校の体育、放課後のプログラムの一部として位置づけられています。
心配されている「成長軟骨(骨端線)を痛める」という話は、無理な重量を扱う、フォームが崩れている、指導がないといった条件のときの問題であって、筋力トレーニングそのものの問題ではありません。
むしろ心配なのは、毎日の過度な練習のほうです
背が伸びなくなることを心配するなら、見るべきは筋トレではなく練習量だと考えています。
ここは丁寧に書きます。「練習量が多いこと」と「食べる量が足りないこと」は分けて考える必要があるからです。
体操選手を対象に、激しいトレーニングが成長に影響するかを検討した総説があります (Malina RM, et al. Sports Medicine, 2013)。そこでは、
- 激しい体操のトレーニングによって、最終的な身長が損なわれることはない
- 上半身・下半身それぞれの伸びが妨げられる様子もない
- 思春期の成長のスピードやタイミングを遅らせる様子もない
と結論づけられています。つまり**「たくさん練習すると背が伸びない」も、 そのままでは正しくありません。**
では何が問題かというと、エネルギー不足のほうです。
過度な練習が続くと、ストレスホルモンであるコルチゾールが高い状態が続きます。そこに食事不足が重なると、前に書いたRED-Sの状態になります。RED-Sでは、成長そのものへの影響が指摘されています。
整理すると、こうなります。
- 適度な筋力トレーニング:適切に行えば問題ない
- 練習量が多いこと自体:それだけで身長が止まるとは言えない
- 練習量に食事が追いついていない状態:ここが問題
つまり心配すべきは「どれだけ練習したか」ではなく、**「その練習に見合うだけ食べられているか」**です。
運動をすると成長ホルモンの分泌が一時的に増えることは知られています。 体をよく動かしている子のほうが伸びやすい、という可能性はあるかもしれません。
ただしそれを目的に筋トレをさせるほどの根拠はまだありません。 「伸びるからやらせる」ではなく、「伸びなくなるから避ける、という理由はない」 ——このくらいの温度感で受け取ってください。
「バレーやバスケをすると背が伸びる」も、たぶん逆です
ついでに、よく聞く話をもうひとつ。
「ジャンプする競技をやると背が伸びる」——これも、私は誤解だと思っています。
バレーボールやバスケットボールに背の高い選手が多いのは事実です。ただ、それは**跳んだから伸びたのではなく、背の高い子がその競技を選んでいる(あるいは選ばれている)**という順番のほうが自然です。
跳ぶことで骨に刺激が入るのは確かで、骨の密度や強度が高まることは知られています。ただし増えるのは太さや強さであって、長さ(身長)ではありません。
念のため書いておくと、「跳んでも意味がない」という話ではありません。
骨が丈夫になること自体は、将来にわたって価値があります。 ただ「背を伸ばすため」という理由で競技を選ぶ根拠は、いまのところ見当たりません。
身長は、大部分が遺伝と、成長期にきちんと食べて眠れたかで決まります。 競技の種類で操作できるものではない、と考えておくほうが現実的です。
これは国の方針でもあります
私の意見だと思われそうなので、書いておきます。
スポーツ庁のガイドライン(平成30年3月)では、運動部活動について次のように示されています。
- 休養日を少なくとも週に1〜2日設けること
- 週あたりの活動時間の上限は16時間未満が望ましい
- 1日の活動時間は、平日は2時間程度、休業日は3時間程度
週5〜6回の練習は、この目安からはかなり外れています。
「休むと弱くなる」わけではない
実際、進学校のなかには昔から週2日のノー部活デーを設けている学校があります。勉強の時間を確保するためですが、それでも大会でしっかり成績を残しているところがある、という話を聞きます。
もちろん、これだけで「練習が少ないほうが強くなる」とは言えません。もともと要領のいい子が集まっている、練習の中身が濃い、といった要素も当然あります。
ただ少なくとも、「毎日やらないと勝てない」が正しいとは限らないことは示していると思います。
**大人が見てあげてほしいのは、練習量そのものより「食べているか」と「休めているか」です。**細くなってきた、疲れが抜けていない、同じところを痛がる——このあたりが出てきたら、量を見直すサインだと考えてください。
この見方をすると、やることがはっきりします。
- 負荷を減らす——量を調整する、フォームを見直す、道具を変える
- 支える力を増やす——足りていない筋肉を鍛える
- 返済の時間をつくる——休息と栄養。溜めたぶんを返す時間
3番目を飛ばして1と2だけをやろうとする方が多いのですが、**負債が溜まっている状態で負荷を足せば、当然もっと溜まります。**このあたりは、あとで書く「疲労が原因なら鍛えても悪化する」という話につながります。
腰痛に「腹筋を鍛えろ」と言われる理由と、その落とし穴
腰が痛いと言うと、たいてい「腹筋を鍛えなさい」と返ってきます。方向としては間違っていません。腰にかかる負荷を、まわりの筋肉で分担する話だからです。
ただし、ここには落とし穴があります。
落とし穴①:「腹筋」だけでは足りない
まず、上体起こしのような腹筋運動だけでは、あまり効果がありません。
あの動きで働くのは主に腹直筋——お腹の前側にある、いわゆるシックスパックの筋肉です。腰を支えているのはそこだけではありません。
腰は、体の前も後ろも、深いところも含めた体幹全体で支えられています。前側だけを鍛えても、支える構造としては片手落ちです。
だから私が勧めているのは、プランクのように体幹が連動して働く種目です。
上体起こしは「腹直筋を縮める」動きですが、プランクは姿勢を保つために全体が同時に働く動きです。腰を支えるという目的には、後者のほうが近い。
なぜ体幹だと腰がラクになるのか
体幹全体が働くようになると、お腹まわりの筋肉が「天然のコルセット」のように働きます。
お腹の中の圧力——腹圧が上がると、体の内側から支えが生まれます。その分だけ腰の骨(腰椎)にかかる負担が減る。結果として、腰痛が軽くなっていきます。
上体起こしで腹直筋だけを鍛えても、この「内側から支える」形にはなりにくい。腰を支えたいなら、腹圧が上がる形で鍛える——これが体幹トレーニングを勧める理由です。
ちなみに体幹を支える動きでは、骨盤底筋のような奥のほうの筋肉にも力が入ります。プランクを始めた方から思わぬ変化を聞くことがあるのですが、その話は夜に現れる体のSOSサインに書きました。
では、コルセットは使わないほうがいい?
天然のコルセットの話をすると、必ず聞かれることがあります。
「コルセットをすると筋肉が弱るから、使わないほうがいいんですよね?」
よく言われる話ですが、私はそこまで単純ではないと考えています。
この点を調べたシステマティックレビューがあります(Azadinia F, et al. The Spine Journal, 2017)。35件の研究を検討した結果、コルセットが体幹の筋力低下を招くという決定的な科学的根拠は見つからなかったと結論づけています。
筋活動(筋電図)については減る研究・変わらない研究・むしろ増える研究があり、結果が一致していません。筋力そのものについても、変化なしとする研究と、増加したとする研究の両方がありました。
つまり「コルセット=筋肉が弱る」と言い切れるだけの根拠は、いまのところありません。動いているとき、作業しているときに使うぶんには、過度に恐れる必要はないと考えています。
ただし、使い方によります
逆に言えば、こういうことになります。
じっと同じ姿勢のまま、長時間つけっぱなしにするのは避けたほうがいい。
動いていない状態で外から固定を足せば、その部分の筋肉が働く機会は減ります。長く続けば、弱くなる方向に働く可能性はあります。
まとめると、
| 使い方 | 考え方 |
|---|---|
| 動くとき・重いものを扱うとき | 使ってよい。腰を守る道具として役に立つ |
| じっと座ったまま一日中 | 避けたほうがよい。働く機会を奪う |
道具そのものが悪いのではなく、動かない時間に頼りきることが問題という整理です。これは施術と同じで、「使いながら、鍛えるほうも進める」のが現実的だと思っています。
しかも、これは次の話にもつながります。
落とし穴②:筋肉は大きければいいわけではない
「強さ」だけを増やしても、同じ姿勢を保つ場面では足りません。
デスクワークで腰が痛くなる人に必要なのは、重いものを持ち上げる力ではなく、同じ形を保ち続ける力です。これは筋持久力と呼ばれるもので、最大筋力とは別ものです。
短時間の全力より、軽い負荷を長くというトレーニングのほうが向いている場面があります。
落とし穴③:柔軟性と強さは、同時に必要
固い筋肉をそのまま鍛えると、さらに固くなります。逆に、柔らかいだけで力がなければ支えられません。
柔軟性と強さは、どちらか一方ではなく同時に育てるものだと考えています。ストレッチだけ、筋トレだけ、というやり方でうまくいかないのはこのためです。
先に動く範囲を戻してから鍛える。あるいは並行してやる。順番を間違えると、鍛えているのに硬くなっていく、ということが起こります。
硬いのは、筋肉だけとは限りません
ここも大事なところです。
体が硬い原因を筋肉だけに求めがちですが、**関節や靭帯の柔軟性も関わっています。**筋肉をいくら伸ばしても、関節そのものが動いていなければ、可動域は戻りません。
だから施術では、筋肉をゆるめるのと同時に、骨の動きを出すことも必要になります。どちらか片方では足りません。
ご自身でやるストレッチも同じです。筋肉を伸ばすだけでなく、関節を大きく動かすことを意識してください。
同じ「肩を回す」でも、肩の筋肉を意識して伸ばすのと、肩関節そのものを大きく動かすつもりでやるのとでは、体の反応が変わります。じっと伸ばす動きだけでなく、大きく動かす動きも入れてみてください。
落とし穴④:疲労が原因なら、鍛えても悪化する
見落とされがちですが、単純に疲れているだけの場合があります。
このとき必要なのは運動ではなく、休息と栄養です。疲れて回復が追いついていない体に負荷を足せば、当然悪化します。
「動かないから痛い」のか「疲れているから痛い」のか。ここの見極めは自分では難しいところですが、寝ても抜けない疲れがある時期は、まず休むほうを選んでください。
4つのどこが足りていないかで対策が変わる
整理すると、「耐える力」は次の4つに分かれます。
| 足りていないもの | こんなときに疑う | やること |
|---|---|---|
| 筋肉量 | 同じ作業で人より早く疲れる、痩せ型で体力がない | 全身を使う運動を習慣に |
| 筋持久力 | 短時間なら平気だが、長時間の同じ姿勢がつらい | 軽い負荷を長く続ける運動 |
| 柔軟性 | 伸ばそうとすると突っ張る、可動域が狭い | 動く範囲を戻すことを優先 |
| 回復 | 寝ても抜けない、食事が不規則 | 運動より先に休息と栄養 |
自分がどれに当てはまるかで、やるべきことが変わります。全部やろうとして続かないより、いちばん足りていない1つから始めるほうが結果は出ます。
最後に:これは「けがをしない体」の話です
ここまで痛みの話として書いてきましたが、最初に立てた式をもう一度見てください。
かかる負荷 > 支える力
裏を返せば、支える力が負荷を上回っていれば、けがをしにくいということです。
痛みが出るのも、けがをするのも、根っこは同じです。だから対策も同じになります。
才能があったのに、けがで終わった選手
私は、これがずっと引っかかっています。
**才能があったのに、途中でけがをして辞めていった選手を、山ほど見てきました。**技術でも意欲でもなく、体が持たなかった。
もしその一部でも防げていたら——長い目で見て、日本代表やオリンピックに届く選手はもっと増えるはずだと思っています。
「スポーツは才能」という言い方が、私は好きではありません
才能があることは否定しません。実際にあります。
ただ、それだけで説明してしまうと、その手前にある「正しく体を鍛える」という部分が見えなくなります。
正しく鍛える過程では、筋力だけでなく反射神経や体の器用さも一緒に育ちます。そこは「生まれつき」で片づけられがちですが、育てられる部分は確実にあります。
体だけでもありません。練習を休む日に、ミーティングで考え方を共有したり、頭を使う時間にあてたりすることもできます。そういう日を作ることは、サボりではなく育てる時間です。
**なんなら、休む日に勉強してもいい。**スポーツと勉強で使う頭は同じではありませんが、重なる部分も多いと感じています。体を休めながら別のものを育てる——文武両道とは、本来そういうことではないかと思っています。
ひとつの競技だけを続ける仕組みに、私は疑問があります
これは個人的な考えですが、書いておきます。
幼いうちから一つの競技に絞らせる、いまの日本のやり方が好きではありません。
いろんな競技をやって、いろんな部位を鍛えて、**最終的に一つの道に進めばいい。**そのほうが体は偏らないし、けがも減るはずです。
これについては、かなり大きな研究があります。
71件の研究・9,241人の選手を対象にしたメタ解析(Barth M, et al. Sports Medicine, 2022)によると、 大人になって世界レベルに到達した選手は、国内レベルにとどまった選手と比べて、
- 子ども時代に複数の競技の指導つき練習が多かった
- 主となる競技を始めたのが遅かった
- 主となる競技の練習量が少なかった
- 初期の伸びがゆるやかだった
という特徴がありました。
そして興味深いのは、ジュニア年代で好成績を出す選手は、その正反対だったことです。 主競技を早く始め、練習量が多く、他競技が少なく、初期の伸びが速い。
つまりジュニアで勝つ条件と、大人になって世界に届く条件は、逆を向いているということです。
論文の考察では、子ども時代の過度な専門化が、 使いすぎによるけが・燃え尽き・競技とのミスマッチを通じて 長期的な成長を妨げうると指摘されています。
アメリカのプロ選手を調べたデータ
「アメリカでは野球だけでなくアメフトやバスケもやると聞く」という話を耳にして調べてみたところ、実際にプロ選手を対象にしたデータがありました。
NBA(バスケットボール)
高校時代に複数競技をしていた選手と、一つの競技だけだった選手を比べた研究 (Rugg C, et al. The American Journal of Sports Medicine, 2018/237人)では、 複数競技だった選手のほうが、
- 出場した試合の割合が高かった(78.4% 対 72.8%)
- 大きなけがを負う割合が低かった(25% 対 43%)
- 調査時点でリーグに在籍している割合が高かった(94% 対 81.1%)
つまりより多く出場し、けがが少なく、選手生命が長かったという結果です。
MLB(野球)
同じように比べた研究(Confino J, et al. Orthopaedic Journal of Sports Medicine, 2019/746人)では、
- 複数競技だった選手のほうが出場試合数が多かった
- 一つの競技だけだった選手は、上肢のけがが多かった(63% 対 50%)
- 投手では肩・肘のけがが多く、肘のけがを繰り返す割合も高かった(33% 対 17%)
とくに投手で差がはっきり出ています。
「小さいころから一つに絞ったほうが伸びる」という直感とは、逆の結果です。
しかもこれは日本の話ではなく、競技レベルが世界最高峰のリーグでのデータです。
早く絞って早く勝つことが、その子の一番いい未来につながるとは限らない——研究が示しているのは、そういうことだと思います。
体を守ることは、競技を諦めさせることではありません。長く続けられるようにすることです。
よくある質問(FAQ)
Q. 施術に通うのは意味がないということですか?
A. そうではありません。痛みが強いとき、固まって動けないときは、まずゆるめるのが先です。私が言いたいのは、施術と生活の見直しはセットだということです。片方だけだと、どうしても遠回りになります。
Q. どのくらい運動すれば変わりますか?
A. 期間には個人差が大きく、はっきりした数字は言えません。ただ数日では変わりません。少なくとも数週間から数か月の単位で考えてください。すぐ結果が出ないからと途中でやめるのが、いちばんもったいないです。
Q. ストレッチと筋トレ、どちらを先にやるべきですか?
A. 伸ばそうとして突っ張る、可動域が明らかに狭いという自覚があるなら、動く範囲を戻すほうが先です。そうでなければ並行して構いません。どちらか一方だけにしないことが大事です。
Q. 痛みがあるときも運動したほうがいいですか?
A. 痛みが出ている最中に、痛む動きを続けるのは避けてください。動かして痛みが強くなる、しびれがある、じっとしていても痛むという場合は、自己判断で運動する前に一度診てもらってください。
Q. マッサージ機や器具は効果がありますか?
A. 楽になる方はいます。ただしこれも「ゆるめる」側なので、負荷と耐える力のバランスが変わらないと、同じところが張りやすい状態は続きます。使うなら、運動と併用してください。
Q. 年齢のせいだと言われました。もう仕方ないのでしょうか?
A. 加齢で筋肉量が落ちやすくなるのは事実です。ただ「だから何をしても無駄」ではありません。落ちやすいからこそ、負荷を減らす工夫と、少しずつでも動かす習慣の両方が効いてきます。
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まとめ
肩こり・腰痛は、かかる負荷が、耐える力を上回ったときに出てきます。
まとめポイント
- 揉めば軽くなる。そのうえで、作った側の条件も見る
- 原因は主に3つ——姿勢、長時間同じ姿勢、使いすぎ
- 前提として、負荷に耐えられるだけの筋肉があるかどうかが大きい
- これは肩と腰に限らず、膝も股関節も同じ。若い人にもスポーツをしている人にも起こる
- 支えきれないぶんは負債のように積み上がる。「今日は変なことをしていない」のに痛むのはこのため
- 「運動しているから足りている」は過信。使う場所は育っても、支える側と柔軟性は残されやすい
- 成長期の子どもはとくに注意。週5〜6回の練習に食事が追いつかないと、筋肉は増えるどころか減る
- 練習は強く使う日と整える日を交互に。あいだはストレッチと巧緻トレーニングで軽く、かつ効率よく
- スポーツ庁も週1〜2日の休養日・週16時間未満を示している。週5〜6回はここから外れる
- 「筋トレで背が伸びなくなる」は間違い。練習量そのものより、練習に食事が追いついているかを見る
- 「ジャンプ競技で背が伸びる」も逆。背の高い子が選ばれている側面が大きい
- 支える力が負荷を上回っていれば、けがもしにくい。痛みとけがは根が同じ
- 世界レベルに届いた選手は、子ども時代に複数競技をやり、主競技の開始が遅く、練習量も少なかった
- NBA・MLBのデータでも、複数競技だった選手のほうがけがが少なく、選手生命が長い
- 「腹筋を鍛えろ」は方向として正しいが、上体起こしだけでは足りない。プランクのように体幹が連動する種目を
- 体幹が働くと腹圧が上がり、天然のコルセットとして腰椎の負担を減らす
- コルセットは「筋肉が弱る」と言い切れる根拠がない。動くときは使ってよく、じっとしたまま頼りきるのを避ける
- 大きさより筋持久力が要る場面が多い
- 柔軟性と強さは同時に。硬さの原因は筋肉だけでなく関節や靭帯にもある
- 疲労が原因なら、鍛えるより休息と栄養が先
今日からできる3ステップ
- 1時間に1回、立ち上がって体を動かす時間を作る
- 上の表で、自分がどれに当てはまるかを1つだけ選ぶ
- 選んだ1つに絞って、2週間続けてみる
※本記事の情報は一般的な健康情報の提供を目的としており、医療アドバイスではありません。 しびれを伴う、じっとしていても痛む、力が入らないなどの症状がある場合は、整形外科などの医療機関にご相談ください。
【参考・出典】
- Azadinia F, Ebrahimi E Takamjani, Kamyab M, et al.「Can lumbosacral orthoses cause trunk muscle weakness? A systematic review of literature」The Spine Journal, 17(4):589-602, 2017.(システマティックレビュー・35件) DOI: 10.1016/j.spinee.2016.12.005
- Stricker PR, Faigenbaum AD, McCambridge TM; Council on Sports Medicine and Fitness.「Resistance Training for Children and Adolescents」Pediatrics, 145(6):e20201011, 2020.(米国小児科学会・臨床報告) DOI: 10.1542/peds.2020-1011
- Malina RM, Baxter-Jones AD, Armstrong N, et al.「Role of intensive training in the growth and maturation of artistic gymnasts」Sports Medicine, 43(9):783-802, 2013.(総説) DOI: 10.1007/s40279-013-0058-5
- Gould RJ, Ridout AJ, Newton JL.「Relative Energy Deficiency in Sport (RED-S) in Adolescents - A Practical Review」International Journal of Sports Medicine, 44(4):236-246, 2023.(総説) DOI: 10.1055/a-1947-3174
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- スポーツ庁「運動部活動の在り方に関する総合的なガイドライン」(平成30年3月) https://www.mext.go.jp/sports/b_menu/sports/mcatetop04/list/1405720_00013.htm
- 厚生労働省「健康づくりのための身体活動・運動ガイド」 https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/kenkou/undou/index.html
- 厚生労働省「職場における腰痛予防対策指針」
- 厚生労働省 e-ヘルスネット「身体活動・運動」 https://kennet.mhlw.go.jp/information/information/exercise.html
EM|接骨院院長(柔道整復師・施術歴19年目・のべ7万人以上を施術)。体の仕組みは資格の範囲で解説し、商品については一利用者として調べた内容をご紹介しています。