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その痛み止め、本当に合っていますか?|全部同じだと思っていませんか

👤 痛み止めが効かないと感じたことがある人、湿布や薬の違いが気になる人
EM(柔道整復師・接骨院院長)⏱ 約21分で読める
その痛み止め、本当に合っていますか?|全部同じだと思っていませんか

「痛み止めを飲んだのに効かなかった」——こう感じたことはありませんか。

接骨院でもよく聞きます。多くの方が、痛み止めは全部同じものだと思っています。強いか弱いか、眠くなるかならないか、その程度の違いだと。

実際は違います。種類によって、狙っている場所も、体の中での働き方もまったく別です。頭痛には効くのに神経痛には効かない、炎症には効くのに骨折の痛みには向かないこともある——「効かなかった」のは、そもそも狙っている場所が違う薬を選んでいただけかもしれません。

この記事では、痛み止めの種類ごとの仕組みと、痛みの種類・程度でどう向き不向きが変わるのかを整理します。

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**私は柔道整復師なので、薬を処方したり、服用の指示をしたりできる立場ではありません。**この記事は、それぞれの薬がどういう仕組みで働いているかという一般的な情報の整理です。実際にどの薬を選ぶか、どう使うかは、必ず医師・薬剤師に相談してください。

まず全体像:痛み止めは、こんなに種類があります

系統成分名(主な商品名)主に働く場所
NSAIDs(弱め〜標準)イブプロフェン(イブ)、ロキソプロフェン(ロキソニン)患部の炎症
NSAIDs(強め)ジクロフェナク(ボルタレン)、インドメタシン(インテバン)患部の炎症(より強力)
アセトアミノフェンアセトアミノフェン(カロナール、タイレノール)脳・脊髄(一部末梢)。胃に優しい
オピオイド系トラマドール+アセトアミノフェン配合(トラムセット)脳・脊髄の痛みの伝達経路
神経障害性疼痛薬プレガバリン(リリカ)、ミロガバリン(タリージェ)過敏になった神経細胞そのもの
SNRIデュロキセチン(サインバルタ)脳から下りてくる「痛みを抑える」経路
血流改善タイプリマプロストアルファデクス(オパルモン、プロレナール)神経周辺の血流
ステロイドプレドニゾロン(プレドニン)炎症全般(広範囲・強力)
筋弛緩薬チザニジン(テルネリン)、エペリゾン(ミオナール)筋肉の緊張・けいれん

**成分名は薬のパッケージや説明書に必ず書かれています。**商品名は販売会社によって変わりますが、成分名を確認すれば、手元の薬がどの系統に当たるか分かります。

これだけの種類が、それぞれ違う場所・違う仕組みで働いています。「痛み止め」とひとくくりにするほうが、むしろ不自然です。

なぜこんなに種類があるのか|2つの根本的に違う発想

大きく分けると、痛み止めには2つの発想があります。

① 痛みの発生源を叩くタイプ(NSAIDs・ステロイド)

炎症が起きている場所で作られるプロスタグランジンという物質の生成を、COX(シクロオキシゲナーゼ)という酵素を阻害することで抑えます。**「炎症そのものを鎮める」**タイプです。

腫れ・熱感を伴う痛みには理にかなっていますが、COXを広く阻害するぶん、胃の粘膜保護も弱まるという副作用があります(胃を荒らしやすい)。

② 痛みの「感じ方」に働きかけるタイプ(アセトアミノフェン・オピオイド系・神経障害性疼痛薬・SNRI)

こちらは炎症そのものを抑えるのではなく、脳・脊髄・神経細胞といった、痛みを感じる側の仕組みに働きかけます。

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正直に言うと、アセトアミノフェンの正確な作用機序は、長年使われているにもかかわらず、まだ完全には解明されていません(Tsuchiya H, et al.「Mechanistic Insights into the Analgesic Action of Acetaminophen」Medicine and Principle and Practice, 2026)。

分かっている範囲では、体内で代謝されて活性物質(AM404)になり、脳・脊髄にある受容体(TRPV1・カンナビノイド受容体)に働きかけて痛みを抑えます。最新の研究では、末梢の神経でも同じ経路で働いている可能性が指摘されています。抗炎症作用はNSAIDsよりかなり弱いぶん、胃への負担は少なめです。

トラムセットの主成分・トラマドールは、さらに独特です。オピオイド受容体への作用と、セロトニン・ノルアドレナリンの再取り込み阻害という2つの経路を同時に持っています(Nossaman VE, et al. Anesthesiology Clinics, 2010)。炎症を抑えるのではなく、痛みの信号の伝わり方自体を変える薬です。

**神経障害性疼痛薬(リリカなど)**はまた別です。神経細胞のカルシウムチャネルに結合し、過剰に興奮した神経からの神経伝達物質の放出を抑えます。しびれ・ピリピリした痛みは、炎症を抑える薬では届きません。

**SNRI(サインバルタなど)**は、もともとうつ病の薬です。脳から脊髄に向かう「痛みを抑えろ」という指令の経路を強化する仕組みで、慢性的な筋骨格系の痛みに処方されることがあります。

湿布にも、まったく違う2系統があります

塗り薬・貼り薬にも、同じ構図があります。

ロキソプロフェン系の湿布は、飲み薬のNSAIDsと同じ仕組みです。皮膚から浸透して、患部の炎症(プロスタグランジン)を直接抑えます。

一方、昔ながらのサリチル酸メチル系の湿布は、まったく別の仕組みで働いていることが分かっています。

Futami T.「Actions of counterirritants on the muscle contractile mechanism and nervous system」Nihon Yakurigaku Zasshi, 1984(PMID: 6327474)

メントール・カンフルと同様に、神経伝導と筋収縮の仕組みそのものに直接作用します。神経の活動電位を弱め、筋肉の収縮反応にも影響することが確認されています。これはCOX阻害による抗炎症とは別の経路です。

Collins AJ, et al.「Some observations on the pharmacology of 'deep-heat', a topical rubifacient」Annals of the Rheumatic Diseases, 1984

温感タイプの湿布(サリチル酸系)は、皮膚の血流を増やすことも確認されています。これが発赤・温感の正体です。

「ほぐす」という表現は厳密には少し違いますが、「筋肉の収縮・神経の伝わり方に直接働きかけて、血流も増やす」という、ロキソプロフェンとは別系統の仕組みで効いているというのは実際にそのとおりです。

つまり湿布を選ぶときも——

  • 炎症・熱感がある → ロキソプロフェン系(冷感タイプが多い)
  • 炎症というより、ただ凝り固まっている → サリチル酸系・温感タイプのほうが向いている可能性

という区別が意味を持ちます。

肩こりで考えてみる

これは肩こり・腰痛の記事で書いた「かかる負荷 > 耐える力」の話ともつながります。

  • 急に痛めた、熱を持っている、動かすと鋭く痛む → 炎症が起きている状態。NSAIDs系が理にかなう
  • 慢性的にガチガチに凝っている、熱感はない → 炎症というより、負債が溜まった状態。温感タイプ・筋弛緩の発想のほうが合う可能性

同じ「肩こり」でも、状態が違えば向いている対処も変わります。

痛みの種類・程度別の目安

程度場面成分名(主な商品名)注意点
軽い痛み軽い頭痛・生理痛などまずアセトアミノフェン(カロナールなど・胃に優しい)抗炎症作用は弱いので腫れには不向き
中程度頭痛(緊張型)・炎症・腫れ・単発の筋肉痛ロキソプロフェン、イブプロフェン、ジクロフェナク(ロキソニン、イブ、ボルタレンなど)イブプロフェンはアセトアミノフェンより頭痛に有効というデータあり
強い炎症強い腫れ・急な炎症ジクロフェナク、インドメタシン(ボルタレン、インテバンなど・より強力なNSAIDs)胃腸・腎臓への負担も比例して大きくなる
重度・コントロール不良骨折、強い腰痛などトラマドール配合剤(トラムセットなど・医師の処方)高齢者などNSAIDsが使いにくい人に選ばれやすい
しびれ・ピリピリ系神経の痛みプレガバリン、ミロガバリン(リリカ、タリージェなど)炎症系の薬では効きにくいタイプ
慢性の痛み長引く筋骨格系の痛みデュロキセチン(サインバルタなど)脳の「痛みを抑える指令」を強化するタイプ

これはあくまで機序から見た一般的な目安です。実際にどの段階でどの薬を使うかは、症状・持病・年齢によって医師が総合的に判断します。

場面ごとの、もう少し詳しい話

頭痛(緊張型)

実は、NSAIDsのほうがアセトアミノフェンより効果が高いという結果が出ています。

Alnasser A, et al.「Paracetamol versus ibuprofen in treating episodic tension-type headache」Scientific Reports, 2023(14試験・6,521人のネットワークメタ解析) イブプロフェンのほうが、パラセタモールより有効性が高い(オッズ比1.73)

緊張型頭痛は、頭や首まわりの筋肉の緊張・炎症が関わっているとされるので、炎症を抑えるタイプが効きやすいのは筋道が通ります。

骨折の痛み

「骨折にNSAIDsは良くないのでは」という話、整形外科では昔から議論されています。プロスタグランジンが骨の修復にも関わっているので、それを抑えると治癒を妨げるのでは、という懸念です。

ただ、最新の大規模メタ解析では、その懸念は明確には裏付けられませんでした。

Chuang, Yang, Tsai, Huang.「Do NSAIDs affect bone healing rate, delay union, or cause non-union」Frontiers in Endocrinology, 2024(20研究・523,240人) NSAIDs使用者と非使用者で、癒合不全・癒合遅延に有意差はなし

著者自身も「薬の種類・用量別の検証が足りない」と留保をつけているので、断定はできません。骨折でトラムセットが好まれる理由は、骨癒合への影響というより、高齢者に多くNSAIDsの胃腸・腎臓リスクを避けたい場面が多いから、と考えるほうが実態に近そうです。

筋肉痛(単発)

運動直後のNSAIDsは、逆に回復を妨げる可能性があるという研究があります。

Markworth JF, et al.「Ibuprofen treatment blunts early translational signaling responses in human skeletal muscle following resistance exercise」Journal of Applied Physiology, 2014

筋トレ後にイブプロフェンを飲むと、筋肉が回復・適応するための信号(タンパク質合成のシグナル)が鈍るという結果でした。単発の筋肉痛には有効ですが、トレーニング後の習慣的な使用は考えものかもしれません。

腰痛(急性・非特異的)— 正直に言うと、決定打はありません

ここだけは、はっきりさせておきたいところです。

Wewege MA, et al.「Comparative effectiveness and safety of analgesic medicines for adults with acute non-specific low back pain」BMJ, 2023(98試験・15,134人・69種類の薬を比較したネットワークメタ解析)

どの薬が優れているか、信頼できる強さのエビデンスはまだない、というのが結果でした。プラセボと比べて痛みを減らした薬(筋弛緩薬のトルペリゾン、プレガバリンなど)はありましたが、確信度は低〜非常に低いレベル。しかもトラマドール系は、効果が際立って高いわけでもないのに、副作用のリスクだけは明確に高いという結果でした。

研究者自身が「慎重なアプローチを推奨する」と結論づけています。急な腰痛に「これが正解」と言い切れる薬は、今の科学ではまだ存在しません。

捻挫

急性期の腫れ・熱感は炎症そのものなので、機序としてはNSAIDsが理にかなっています。ただし、骨折のような「NSAIDsが治りを妨げるか」を直接検証した決定的な研究までは確認できていません。分かっていないことは、正直に分からないと書いておきます。

よくある質問(FAQ)

Q. どの痛み止めを選べばいいですか? A. 私からは具体的にお答えできません。痛みの種類(炎症性か、神経痛か)と程度によって向き不向きが変わるので、この記事を参考にしつつ、実際の判断は医師・薬剤師に相談してください。

Q. カロナールとロキソニン、どちらが強いですか? A. 「強さ」の比較ではなく、得意な痛みの種類が違います。カロナールは抗炎症作用が弱いぶん胃に優しく、ロキソニンは炎症そのものを抑える力が強い代わりに胃腸への負担があります。

Q. 湿布は冷感と温感、どちらを選べばいいですか? A. 熱感・腫れがある急性期は冷感(ロキソプロフェン系が多い)、慢性的な凝りには温感(サリチル酸系が多い)が理屈としては合います。ただし迷う場合は薬剤師に確認してください。

Q. 市販薬と処方薬、何が違いますか? A. 同じ成分でも、市販薬は含有量が控えめに設定されていることが多いです。処方薬(トラムセット、リリカなど)は医師の診断のもとで使う薬なので、自己判断での入手・使用はできません。

Q. 痛み止めを飲み続けても大丈夫ですか? A. 種類によってリスクが異なります(NSAIDsは胃腸・腎臓、アセトアミノフェンは肝臓など)。長期間の使用が必要な場合は、必ず医師に相談してください。

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まとめ

まとめポイント

  • 痛み止めは大きく分けて「炎症を叩くタイプ(NSAIDs)」と「痛みの感じ方に働きかけるタイプ(アセトアミノフェン・オピオイド系・神経障害性疼痛薬・SNRI)」がある
  • 湿布にも**ロキソプロフェン系(抗炎症)サリチル酸系(神経・筋収縮への直接作用+血流促進)**という別系統がある
  • 頭痛はNSAIDsのほうがアセトアミノフェンより有効というデータがある
  • 骨折とNSAIDsの骨癒合への影響は、最新の大規模研究では明確には裏付けられなかった
  • 運動直後のNSAIDsは、筋肉の回復シグナルを鈍らせる可能性がある
  • 急性の腰痛については、「これが正解」と言えるほど強いエビデンスはまだ存在しない
  • 「効かなかった」のは、そもそも狙っている場所が違う薬だった可能性がある

※本記事の情報は一般的な健康情報の提供を目的としており、医療アドバイスではありません。薬の選択・使用については、必ず医師・薬剤師にご相談ください。


【参考・出典】

  1. Tsuchiya H, Takai Y, Mizogami M.「Mechanistic Insights into the Analgesic Action of Acetaminophen: Its Bioactive Metabolite Induces Peripheral Analgesia in Addition to Central Analgesia」Medicine and Principle and Practice, 2026.(総説) DOI: 10.1159/mpp/adpag006
  2. Nossaman VE, Ramadhyani U, Kadowitz PJ, Nossaman BD.「Advances in perioperative pain management: use of medications with dual analgesic mechanisms, tramadol & tapentadol」Anesthesiology Clinics, 28(4):647-666, 2010. DOI: 10.1016/j.anclin.2010.08.009
  3. Futami T.「Actions of counterirritants on the muscle contractile mechanism and nervous system」Nihon Yakurigaku Zasshi, 83(3):207-218, 1984. PMID: 6327474
  4. Collins AJ, Notarianni LJ, Ring EF, Seed MP.「Some observations on the pharmacology of 'deep-heat', a topical rubifacient」Annals of the Rheumatic Diseases, 43(3):411-415, 1984. DOI: 10.1136/ard.43.3.411
  5. Alnasser A, Alhumrran H, Alfehaid M, et al.「Paracetamol versus ibuprofen in treating episodic tension-type headache: a systematic review and network meta-analysis」Scientific Reports, 13(1):21532, 2023.(14試験・6,521人) DOI: 10.1038/s41598-023-48910-y
  6. Chuang, Yang, Tsai, Huang.「Do NSAIDs affect bone healing rate, delay union, or cause non-union: an updated systematic review and meta-analysis」Frontiers in Endocrinology, 2024.(20研究・523,240人) DOI: 10.3389/fendo.2024.1428240
  7. Markworth JF, Vella LD, Figueiredo VC, et al.「Ibuprofen treatment blunts early translational signaling responses in human skeletal muscle following resistance exercise」Journal of Applied Physiology, 117(1):20-28, 2014. DOI: 10.1152/japplphysiol.01299.2013
  8. Fu JL, Perloff MD.「Pharmacotherapy for Spine-Related Pain in Older Adults」Drugs & Aging, 39(7):523-550, 2022.(138件の二重盲検試験のレビュー) DOI: 10.1007/s40266-022-00946-x
  9. Wewege MA, Bagg MK, Jones MD, et al.「Comparative effectiveness and safety of analgesic medicines for adults with acute non-specific low back pain: systematic review and network meta-analysis」BMJ, 380:e072962, 2023.(98試験・15,134人) DOI: 10.1136/bmj-2022-072962

カラダリセットラボ|本記事は接骨院院長(柔道整復師・施術歴19年目・のべ7万人以上を施術)が執筆・監修しています。

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著者

EM(柔道整復師・接骨院院長)

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